目 次 Page1.薬との付き合い方
Page2.症状別の薬の使い方
Page3.行き先別の薬の対処方法
|
◆はじめに
海外に暮らしはじめの時期は、どんなに元気な子どもでも長旅の疲れや生活の変化で体調を崩しやすくなります。当面、必要になりそうなものはやや多めに日本で準備して持っていきたいものです。
ここでは主に1年以上の長期赴任する家族に同行する子どものことを念頭に置いてまとめてみました。
注)日本からの持参薬を使っても病状が改善しないときは、速やかに現地の医療機関を利用してください。
◆対象国に応じた携行薬の準備について
海外のどの地域に行くかによって、準備の仕方が変わってきますが、共通していることは次の3つです。
予防接種などでふだんかかりつけの医師に海外赴任の予定を早めに知らせる。かかりつけ医がいない場合は、これをきっかけに受診してもよいでしょう。
「持病」がある場合は、診断書または治療経過報告書、現在の処方薬(処方量、飲み方。薬品名は必ず一般名で記す。処方量は3錠とか2カプセルとかではなく、必ず成分量でr、g単位で記す。)を記載した書類を準備する。基本的に英文で記載してあれば通用します。
出発時期が近くなったら、持参薬を準備する。処方薬は通常2週間が限度ですが、薬の種類によっては30日あるいは90日分処方できるものがあります。水薬は保存が利きませんので散剤やドライシロップ剤で処方してもらいます。(白い散剤を麻薬と間違われないようにするためには、医師のの署名入りの英文処方箋を添付しておくとよいでしょう。)
市販薬はふだん使い慣れているものを少し多めに準備すればよいでしょう。有効期限の長いものを選ぶようにしたいものです。添付文書を確実に保管しておくことと医師からの処方薬を併用しないように注意しましょう。薬の成分が重なったり、薬どおしの相互作用などで思わぬ副作用が出たりすることがあるためです。
言葉によるコミュニケーションが問題になりそうな場合は、各自で以下のような「紙」をあらかじめ準備することをお勧めします。
「翻訳メモ」:医師に書いてもらうほどの病歴はないが、少し気になるようなことは何でも「紙」にメモし翻訳しておくと、クリニックで全てを話さなくても済みます。
例)5歳、急性虫垂炎の手術、1週間入院とか、抗生物質で下痢しやすい、といったことを英語か現地語に直しておくと大変役に立ちます。
「イラスト」:「紙」の上にからだのイラストを描き、のど、胸、腹などと書いてそれを英語か現地語に翻訳しておくと、イラストを指差しながら「痛い」、「苦しい」と言えば(もちろん英語か現地語で)かなり通じるはずです。
一般名について
どの薬も次の3つの名前を持っています。一般名、商品名、化学名です。世界で共通に医師、薬剤師に通用するのが一般名です。(一部日本国内だけに通用する一般名もあります。)したがって「持病」の治療を継続するためには、一般名で記載することがとても重要です。処方箋に書かれているのが商品名ですが、各国の製薬会社が独自に付けるわけですから、これを英語にして持参しても外国では通用しません。化学名は研究者が用いる構造式名です。例)解熱鎮痛剤としてよく処方せれるアセトアミノフェン(一般名)製剤は、商品としては国内に限っても処方薬、市販薬あわせて数十種類もあります。一流ブランド品から無名のいわゆるゾロと呼ばれる商品までさまざまです。また各国でも同様で別々の名称で売られているのですから通用しないわけです。
◆薬に関する一般的な注意事項
薬とうまく付き合うためには、世界中どこにいても注意しなくてならないことがいくつかあります。
1.過去の薬の副作用、アレルギー症状などを治療開始前に申告する。(これは各自「翻訳メモ」を持っていると役に立ちます。)
2.治療内容、治療開始・終了の目安などについて納得するまで医師と相談する。
3.もし、さらに心配なら、セカンドオピニオン、サードオピニオンを求めてもよいでしょう。(ドクターショッピングをお勧めするわけではありませんが、重大な疾患の場合には仕方がありません。)
4.薬の効果、副作用、その出現率などについて医師、薬剤師とよく相談する。
5.治療開始後は、支持された用法用量を守る。
6.支持された日数使用する。
7.副作用と疑われるような症状が出現した場合には、直ちに使用を中止し、医師に受診する。
◆薬に関する日本と外国の違い
次に日本と外国との違いについておおまかにまとめます。
1.多くの国では医薬分業が普通である。
2.病気の種類によっては、日本と外国で治療法が異なることがある。
3.外国では、日本のように抗生物質が頻繁に処方されることはない。
4.外国では、一般的にドライシロップ製剤や坐薬はあまり多くない。
5.外国では、解熱鎮痛剤を多様する場合がある。
6.外国では、注射薬を多様する国がある。
7.体重さがあるため、国によっては薬の効果が日本人には強すぎる場合がある。
これらの情況を踏まえた上で受診しますが、分からないことがあるときは、必ず質問することが重要です。現地語が無理なら、片言の英語でも十分です。よく分からないときに、相槌を打ったり、“Yes”と返事するのは禁物です。会話が難しいときは、紙の上で筆談にしてもよいでしょう。単語で十分です。そのため、和英辞典だけでなく和・現地語辞典(販売されていなければ英−現地語辞典で代用)を準備するとよいでしょう。また、日本で販売されている医学辞典や薬のハンドブックなどを持参されると参考になります。
コラム@ 医薬分業について
日本でも普及してきましたが、要するに院外処方になるということです。すなわち病院やクリニックでは処方箋の発行だけで、薬そのものは薬局までその処方箋を持参して購入することになります。薬局は外国でも日本と同じように、クリニックと同じビルにある場合もありますし、ドラッグストアやショッピングセンターにある場合もあります。呼び名はいろいろです。基本的にどこの薬局を使ってもかまいませんが、在庫がない場合や調剤に手間を取ると、人手まで少し時間がかかる場合もあります。極端な例でビックリされるかもしれませんが、国によっては入院中に使う飲み薬や注射薬でさえも、病院の外にある調剤薬局で購入してこなくては治療が始まらないようなところもあります。