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財団法人母子衛生研究会では、毎年、海外在留日本人母子の「医療」「教育」「妊娠・出産」という母子の生活のために必要不可欠な情報を収集するために様々な国に視察団を送っています。2001年度の視察は、日本人長期滞在者の多いアメリカ西海岸のサンノゼ市、ロサンゼルス市で行われました。

 

訪問インタビュー&視察に御協力くださった方々

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吉田隆先生(小児科)
@Sunnyvale
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市下スティーブン先生(内科)
@Cupertino
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障害のある子どもの親が設立し
NPOうち、最大の組織の一つ
Parents Helping Parents
@Santa Clara

Valley Medical Center @Santa Clara

日米医療の違い

日本の開業医と大きく異なるところは、かかりつけ(家庭)医制度の徹底と、契約を結んだ病院での診療(Priviledge)権である。

分業がはっきりしているため、一般的に、子どもを担当する小児科医は出産前から決められていることが多く、主治医となった医師は出生から24時間以内に、その子どもの初検診を行う義務がある。子どもが生まれると、その瞬間からそのケアに対する全責任を小児科医が負うことになるわけである。このようにアメリカでは一旦患者を引き受けると、それが一種の医療契約とみなされ、24時間対応する責任が生じる。電話相談への対応や、休診の際には他の小児科医に代理を依頼するといったことも医師の義務となる。この関係は、患者がなんらかの理由で他の医者に移るまで続く。

病院における診療も、この医師?患者契約の延長上にある。入院を要する患者がいると、契約を結んだ近隣の病院に入院させるが、そこでも開業医である主治医の責任と指示によって診療が行われる。もちろん、重症患者や専門医の治療が必要な患者は病院のスタッフに任せることになるが、基本的には、開業の医師は、朝あるいは夕方に自分の診療所での仕事を終えてから、病院まで足を運んで入院させた患者の診察や治療を行う。

 吉田、市下両先生とも、日本とアメリカの医療の大きな違いとして、「診療内容の違い」と「医療保険制度の違い」をあげておられた。アメリカで医療を受ける際に、ほとんどすべての日本人が苦労する医療保険制度の違いについては、後述することとし、まずは小児医療における日米の差について説明する。

小児医療における日米の差

 両医師ともに強調していたのが、予防接種の種類と接種スケジュールの差である。表3(次頁)に日米の予防接種の接種スケジュールを示すが、ワクチンの種類とスケジュールが異なっていることが、一目瞭然であろう。

日米の予防接種の相違

アメリカのスケジュール

新生児

  B型肝炎
1ヵ月   B型肝炎
2ヵ月   3種混合、インフルエンザ桿菌、ポリオ、肺炎双球菌
4ヵ月   3種混合、インフルエンザ桿菌、ポリオ、肺炎双球菌
6ヵ月    3種混合、インフルエンザ桿菌、肺炎双球菌
9ヵ月   B型肝炎、ツベルクリン反応
12ヵ月   水痘、肺炎双球菌
15ヵ月   インフルエンザ桿菌、MMR
18ヵ月   3種混合、ポリオ
4〜6歳   3種混合、ポりオ、MMR
11〜13歳   ツベルクリン反応破傷風

             

日本のスケジュール

1歳までに

   3種混合(3回)、ツベルクリン反応、BCG、ポリオ(2回)
1歳過ぎたらすぐ   麻疹、風疹、日本脳炎、3種混合2期
任意6ヵ月   B型肝炎、水痘、おたふく風邪、インフルエンザ(ウイルス)、
  A型肝炎、肺炎双球菌

 

日米の差(まとめ)

(1)アメリカで通常接種するが日本ではしないもの

インフルエンザ桿菌、B型肝炎、肺炎双球菌、水痘、MMR

(2)日本では行うがアメリカでは通常接種しないもの

BCG、日本脳炎

(3)接種回数が異なるもの

インフルエンザ桿菌、B型肝炎、肺炎双球菌、水痘、MM

日本の場合、スケジュールについては、地方自治体や医師あるいは親の裁量にまかされる部分が多く、かなり柔軟であるのに対し、アメリカではきっちりとした細かいスケジュールが小児科学会によって推奨されている。

アメリカで接種されるワクチンは、インフルエンザ桿菌ワクチンを除き、日本でも接種可能である。しかし、接種不可能なインフルエンザ桿菌に加え、B型肝炎、BCGの予防接種については、実際上大きな問題となることが多い。

まず、B型肝炎やインフルエンザ桿菌のワクチンは日本では通常接種しないが、アメリカでは全員に接種されている。幼児期にアメリカに渡った場合は、後から追いかけてこうしたワクチンの接種を受けなければならない。

また、BCGはアメリカに渡った子どもの家族と、日本の予防接種事情を知らないアメリカ人医師に大きな混乱と誤解を招いている。

日本ではツベルクリン反応を行い、陰性者にはすぐにBCGを接種している。ツベルクリン反応は予防接種ではなく、結核に感染しているかどうかを調べる検査である。陰性であるということは、まだ結核菌が体に入っていないことを示すので、BCGの接種を行う。BCGは弱くした結核菌の生ワクチンで、摂取すると終生免疫ではないが、結核菌に対する免疫がつく。ところがアメリカでは、BCGは行わずに、定期的にツベルクリン反応を行い、結核菌感染が疑われたらすぐに結核の治療を行うという方針をとっている。

BCGを接種して、免疫がついていればツベルクリン反応は陽性となる。だから日本でBCGをうけた子どもがアメリカでツベルクリン反応を行えば、当然陽性となるのである。ところがアメリカの医師にとって「ツベルクリン反応陽性=結核菌感染」を意味する。いくら“日本でBCGを接種しました”といっても信じてもらえないのである。結局、胸部レントゲンを撮られたうえで治療が開始されてしまう、ということになる。BCG接種後にアメリカにわたる場合、その旨を英文で説明した証明書を持っていくしか、こうしたトラブルを避ける方法はないであろう。

このほか、百日咳は6ヵ月以下の乳児がかかると、重症の肺炎を起こし、命にかかわることがある疾患であるために、6ヵ月までに3回の接種を行うのが医学的には望ましい。しかし日本ではさまざまな理由から接種時期はもっと後になることが多い。細かい接種スケジュールに従って予防接種を行っている吉田医師からも、「どうして日本では6ヵ月までに3種混合を終わらないのか」と、逆にこちらが質問されてしまった。

 ■薬の処方の違い

医学は一応自然科学であるから、日米でも診断が同じなら理論的には同じような治療が行われるはずである、しかし市下、吉田両医師がともに指摘するように、よくある病気でも薬の使い方に差が認められる。

小児科の日常診療の場でもっとも多い疾患は、急性上気道炎(風邪)であるが、これはウイルスの上気道への感染によって引き起こされるもので、抗生物質は効果がない。そうした理由で、通常の風邪には抗生物質を処方しないのが医学的な常識になっている。しかし中耳炎や副鼻腔炎(蓄のう症)を合併する場合、あるいはのどに溶連菌感染が疑われる場合には抗生物質を使用することになっている。また抗生物質で治療する場合には少なくとも1週間服用することも常識になっている。

ところが吉田医師や市下医師によると、「日本の患者さんは、通常の風邪でも抗生物質を求めることがあることと、抗生物質を処方しても最後までのまずに、数日で症状が軽くなるとそこで自分で止めてしまう」という。これは、おそらく日本での治療経験(風邪でも抗生物質が処方されることがあり、その場合、服用期間が通常3〜4日であること)が原因であろう。日本での風邪への抗生物質の(予防的な)投与や、短い服用期間がすべて不適正な治療法であると言い切ることはできないが、日米の治療方針の違いがもっとも目立つ点であり、全く逆の訴えが在日外国人から寄せられることがある。

 

■アメリカの医療保険

市下、吉田両医師は、日米の医療保険制度の違いからくる誤解やトラブルが、アメリカで医療を受ける際に一番大きな問題であることを強調していた。よくアメリカには医療保険がない、といわれるがそれは間違いである。アメリカにも医療保険はあるし、保険に加入しているのが普通である。アメリカの医療保険制度の特徴を日本との対比でまとまると以下のようになるだろう。

 1)日本のように国民皆保険ではなく、また国が管掌する保険よりも民間の保険会社が請け負う保険が多い。

アメリカに医療保険制度がない、というのは日本のような政府管掌の公的な医療保険制度がない、という意味である。アメリカの医療保険はその主体が民間保険会社が提供するさまざまな医療保険プランである。 

2)保険でカバーできる疾患や治療が、日本のように全国一律ではなく、保険の種類によって異なってくる。

民間保険会社の提供する保険プランとは、日本の生命保険、あるいはガンや疾患保険のようなものと考えれば理解しやすい。あるいは例えはよくないが、自動車の保険のようなものと考えても良い。自動車保険に加入するときには、一番基本となる対人対物の損害保険の補償額や、それ以外のオプションの保障内容を契約時にきめることができる。保険料を少なくしたければ、こうしたオプションを減らしたり、保障限度額を低くすればよい。

これに対して日本の医療保険は、保障される内容の選択はできず、全員同じ内容になっており、保険料は個々の収入や加入している保険団体の種類によって自動的に決まってくる。また保険への加入は強制的である。

 3)日本のように全国でどの医療機関にでも受診できる保険もあるが、多くは受診できる医療機関が限られていたり、同じ保険でも受診する医療機関によってカバーされる内容が異なる。

アメリカの民間保険会社で提供している医療保険は大きく3タイプに分けることができる。下方にその3つのタイプについてまとめた。同じ医療保険といってもカバーされる内容が大きく違うことが分かるだろう。受診できる医療機関が限定された保険は、それだけ保険料が低くなる。指定された医療機関では患者を確保できるので、料金を下げることが可能になるのである。

注意しなくてはならないのは、出産と歯科のケアである。加入したときに妊娠していることが分かると出産費用が支払われない場合がある(加入後の妊娠出産はカバーされても)。また原則として歯科は別個に保険料を支払う必要がある。

吉田医師は3人のお子さんがおり、家族全体で歯科サービスもカバーされている保険に加入しているが、月額保険料は1500ドル(約20万円)であるという。その高額なのに驚くが、おそらく一番サービスがよい種類の保険に入っておられるからだろう。

 4)保険の種類によっては、医師が治療を行う前に、保険会社の承諾を求めないと費用が支払われないことがある。

日本では事後審査で医療費の支払い額が確定し、非支払い分は医療機関の損失になるために、必要な検査や治療が行われないことはないが、アメリカではときとして、医師が必要と感じても、保険からの支払いが認められない場合には、その必要な医療を行うことができないという事態が発生しうる。

日本の医療保険制度では、被保険者本人は2割、家族は3割負担であり、残りは支払基金からまとめて医療機関にお金が支払われる。この際に診断名と治療の内容が一致しなかったり、ある限度以上の濃厚な治療を行うと、審査によって支払額がカットされる。例えば、肺炎なのに下痢止めの治療を行ったり、風邪に高額なγ-グロブリンなどを使ったりすると、お金が支払われず、医療機関の持ち出しになってしまう。しかし患者にその負担がまわることはない。

アメリカの保険でも保険料の低いものは、疾患別に支払いの基準が細かくきめられており、それを把握しないで治療を行うと、医療機関の損失となることもあるため、治療や検査をする前に、保険会社に連絡して承認をとることが普通に行なわれている(緊急時はその限りではない)。そのために、患者や医師が必要を感じていても、その検査や治療が行えないことが生じうる。

 

5)保険契約の際に、そのカバーする内容を細かく指定することができるが、そのために保険の内容について、被保険者(または契約者)がきちんと理解をしておくことが必要となる。内容を理解していないで契約を結ぶと、望んだ医療サービスが受けられないことがありうる。

なんでも一律で、保険金も自動的に決まる仕組みになれている日本人には、なんとも不便な制度であるが、十分な保険の知識さえあれば、自分でその内容を決められるという点を、むしろ長所ととらえることもできる。また“自分の健康は自分で管理する”という自主性を促進するためにもよいと考えることもできる。しかし、どこまで自分の健康や病気について正しい予測ができるのか、という疑問も当然出てくる。

 )保険料を支払うことができない低所得者には、国や州による無料の医療保険がある。カリフォルニアではMedi-Calという州が負担する医療補助制度がある。しかし、低所得レベルには達しないが、民間の医療保険の支払いをする余裕のない「非保険加入者」がアメリカ全体で3000万人近くいるといわれている。ただ保険に加入していない人のためにも、無料で医療サービスを提供する医療機関はある。

郡病院などの公立医療機関の救急室は、保険がなく医療費が払えない人に無料で必要最低限の医療サービスを提供している。ただし、こうした医療機関の場合、医療サービスの質が低いこともある。また診察までに数時間待たされることも稀ではないという。

 

アメリカの医療保険について 

 日本では、国民健康保険や健康保険など、全国民が公共の保険に入ることが義務付けられている。このため、所得に応じた保険料を支払っていれば、本人もその家族も、医療にかかった金額のうち何割かを負担すれば、どこの病院に行っても、すぐに医療を受けることができる。

 アメリカでは、日本とは違い、医療保険は自分で民間の医療保険会社を選んで入る。保険に入らなければ、月々、何万円もの保険料を払わずにすむが、風邪をひいて病院にいけば数万円かかるし、予防接種も赤ちゃんの健康診断も万単位の料金を払わなければならなくなる。歯の治療は、別に歯科専門の保険に入る必要があるなど日本とかなりシステムが異なる。

 保険は種類もいくつかあり、その内容も、保険会社によってまったく異なる。また、治療方法もたくさんのオプションの中から選ばなければならないことも多い。このため、低額の保険に入ったら、たったふたつの病院にしか保険が使えなかったとか、子どもが救急医療に運ばれたが、病院から、保険の契約内容では、親の希望する治療は保険会社が認めないと言われたりすることもある。

 企業派遣でレベルの高い保険に入っていれば、なんの問題もないが、自費で保険に入る家族にとっては、アメリカ生活の中では、最も困難な手続きのひとつといえる。

 医療保険の加入/実践講座≫

【 ステップ1】

医療保険は、保険料によって大きく3つのタイプに分かれる。

Indemnity Insurance Plan

保険料は高いが、どこの病院でもどの医師にも受診することができる。保険料は、月にひと家族で10万円?20万円。

PPO

保険料はIndemnity Insurance Planより安くなるが、受診できる医療機関に制限がある。

HMO

保険料が安く、4人家族で150ドル/月ぐらいから加入でき、来診時に自己負担の10ドルを払えば、あとの治療費は保険会社から支払われる。たが、指定された医療機関でしか治療してもらえず、保険会社や契約内容によっては、指定されたふたつの診療所でしか治療が受けられないこともある。また受けられる治療も限られ、薬の種類にもかなり制限がある。

・その他

(例)Kaiserの保険
Kaiser病院に所属する医師だけにかかることができる。自己負担は5ドルから10ドルのみ。

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【ステップ2】

どの保険に入るか決まったら、次に保険の内容について検討する。

たとえば、

・年間、何回くらい治療を受けるのか。

・年間、自費でいくらまで払い、そのあといくらまで保険から払うようにさせるのか。

・どんな治療を希望するか(例、CTスキャンが受けられるようにしておくなど)

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【ステップ3】

手続きが終わると、保険会社から保険カードが送られてくる。かかることのできる医療機関のリストを送ってくるところもある。

病院にかかる前や、治療を受ける前には、自分たちがどんな内容の保険に入っているのか、必ず確認しておく。たとえば、診察を希望する医師が、保険会社の医師のリストに入っているか。医師の治療が保険の対象になっているか。出される薬が保険会社のリストに入っているかなど。

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≪医療プランの一例≫

全米にネットワークをもつブルークロスの保険(200111月現在)

家族構成:35歳の夫と32歳の妻、4歳と2歳の子ども

保険料:HMO 365ドル〜/

歯科医療:27ドル〜/

※カリフォルニア州で加入した場合は、州内でしか保険は使えない。

 

医療保険加入のアドバイス

 医療保険は複数かけない

事 例

困った アメリカの医療費は高いと聞いていたので、万一に備え、アメリカに赴任する前に海外旅行傷害保険をかけ、現地到着後は民間の医療保険にも入った。その後、入院する事態になり、ふたつ保険に入っていてよかったと思っていた。が、いざ保険の支払いの段階になると、双方の保険会社が、お互いに他方から保険金を支払うよう交渉をしはじめ、間にはさまれてたいへんな目にあってしまった。

アドバイス日本から来る場合、海外旅行傷害保険をかけ、なおかつ現地の保険をかけるケースが多い。だが、この場合、双方の保険会社がお互いに、他方から保険金を出すよう交渉することが多く、非常に面倒なことになる。このため、複数の保険には入らないほうが無難かもしれない。

 

海外旅行傷害保険では出産費用はおりない

事 例

困った 妊娠4ヵ月のときに、夫のアメリカ赴任が決まり、現地で出産することにした。アメリカでは出産費用がかなり高いと聞いていたので、海外旅行傷害保険に入っておいた。ところが、渡米後、保険会社から、出産にかかる費用は、保険からは出ないと言われてしまった。

アドバイス海外旅行傷害保険だと、出産にかかった費用は、保険の対象にならないので注意する。

 

永住者は海外旅行傷害保険に入れないことも

事 例

困った 会社の派遣で渡米した。そのときは、海外旅行傷害保険に入っていた。事情があって、会社を辞めて永住することにした。海外旅行保険は、とても便利なので継続しようとしたが、永住者は加入できないと断られてしまった。

アドバイス短期の滞在なら、海外旅行傷害保険が便利なのでお薦めだ。自分でプランを選べば、安くそして充実した内容になる。

でも、留学や商用などの旅行目的ではないと、1年ものの保険には入れなかったり、3ヵ月おきに日本に帰って更新しなければならなかったりする。

 

●医療保険は妊娠前にかける

事 例 

困った 妊娠6ヵ月で渡米した。海外旅行傷害保険だと出産費用は下りないと聞いていたので、アメリカの医療保険に加入しようと思った。しかし、ほとんどの保険会社から、すでに妊娠しているのなら、今から保険に入っても、出産費用は出せないと言われた。

アドバイスアメリカの医療保険は、妊娠前なら保険に加入しておけば、出産費用が支払われる。だが、妊娠後に保険に加入したいと思っても、出産費用はまったくカバーされなかったり、“妊娠○ヵ月目までの加入なら出産費用が支払われるが、それ以降はおりない”という保険会社が多い。特に6ヵ月を過ぎると保険がおりる会社は稀で、出産間近だとまず出産費用は出ないと考えたほうが良い。

 

●経済的に医療保険に加入できないときは、公共機関に相談をする

事 例

困った 収入が少なく、医療保険に入れない。妊娠し出産を控えているが、出産費用がなく、困っている。

アドバイス条件が合えば、公的機関を通じて無料で医療が受けられる制度があるので、地元の社会福祉事務所に相談してみる。

 

●海外旅行障害保険は、検診も予防接種も使えない

事 例

困った 生後2ヵ月の子どもをつれてアメリカに移り住むことになり、海外旅行障害保険に加入した。渡米後、3ヵ月健診と予防接種を受けようと思い、かかりつけの医師に行ったら、健康診断も予防接種も、海外旅行傷害保険は使えないと言われてしまった。

アドバイス海外旅行傷害保険は、健康診断と予防接種に対しては、海外旅行傷害保険は適用されない。実費だと、どちらも200ドルぐらいかかることがある。(ただし、低所得層向けの医療機関などで安く受けられることもある)

 アメリカの場合、出産後の定期健診が日本より多く、予防接種も受けていないと、幼稚園や小学校へ入れないことが多い。このため、子どもは現地の保険に加入させたほうがよい。

 

●医師は保険を常に意識して治療

事 例

 困った 子どもが病気になったので、病院に電話した。最初に子どもの症状を説明するのだろうと思っていたら、「どの保険に入っていますか?」といきなり聞かれ驚いた。そして、HMOだとこたえると、「うちはHMOは扱っていないので、保険は使えない。受診するなら実費になりますよ」と言われてしまった。結局、保険会社に電話をかけて、HMOの保険が使える医師を紹介してもらった。

アドバイス各医療機関は、患者の加入している保険によっては、その保険を使っての治療が一切できないことがあるので、受付をする際に、必ず保険の種類を確認する。

 各保険は、治療についても細かい規定があり、医師が受けさせたいと思う治療があっても、保険会社が許可しなければ保険がおりず、全額患者負担、ときには医師や医療機関の負担となることがある。また、医師がこの治療であれば、保険の適用内だろうと治療を行ったところ、あとで患者の家に保険会社から「治療費は払わない」との通知があり、患者から「なぜ保険が使えない治療をしたんだ!」と訴えられることもある。

 そんなわけで、患者は、予約をするために医療機関に電話をすると、まず最初に「どの保険に入っていますか?」と聞かれる。保険の種類がわからないと予約を受け付けてもらえないこともあるので、患者は、電話をかける前に、まず自分の保険の内容についてしっかりと理解しておくことが必要である。

 

●日本語の話せる医師を受診する場合、保険の種類や内容に注意

事 例

困った 子どもが病気になったので、近くの日本語が通じる医師のいる病院に行った。だが、家族が入っている医療保険は、その病院では使えないと言われた。

アドバイス日本語が話せる医師は、PPO以上の保険に入っていないと受診が受けられないことが多い。HMOに加入するのであれば、治療が受けられる医師の中に日本語の話せる医師がいるかどうか、事前に確認しておいたほうが良い。

 もしも子どもだけは日本語の話せる医師に診せたいという場合は、子どもの保険はPPO、親はHMOという方法もある。

 

●保険の関係で希望する治療がすぐに受けられないことが意外と多い

事 例

・その1

困った子どもが頭痛がひどく病院に行った。CTスキャンを希望したが、家族の保険は、CTスキャンは契約の中に入っていないということで、一般的な鎮痛剤しかもらえなかった。6時間たち、泣き叫ぶ子どもの姿に、ついに親もがまんできなくなり、医療側に抗議して、緊急ということでなんとかCTスキャンをとってもらった。

・その2

困った夫は、胃の具合がかなり悪かったのにずっと我慢していたらしい。医師から薬を出されたが、よくならないので検査をして欲しいといったのだが、HMOだからということで、保険会社がなかなか検査の許可を出してくれなかった。でも、薬では一向に治らないことから、やっとバリウムを飲んでレントゲンを撮る検査が許可された。最終的には胃カメラの検査になったが、ずいぶんと時間がかかってしまった。

・その3

困った医師が、患者の症状をみて、入院の必要があると診断した。だが、保険会社が許可を出さなかったので、入院できなかった。

アドバイス希望する治療や検査が契約した保険に含まれていないと、いざというとき、すぐに受けられないことがある。それでもがんばって検査の必要性を訴えれば、保険会社も折れる?かもしれない。

ある親の感想。

「日本は何も言わなくても最低限の治療はしてもらえる。アメリカは黙っていれば何もしてもらえない」

 

●保険料が高い

事 例

困った 4人家族でひと月2万円、年間に24万円も医療保険に支払っている。でも、HMOなので、保険金を払っていても、指定された医療機関にしかかれず、さらに限定された治療しか受けられない。

 家族が健康なら保険には入らず、必要になったとき、希望する医師のところで、受けたい治療をしてもらったほうがずっといいと思うこともある。

アドバイスおそらく、たくさんの人が同じような意見をもっているに違いない。でも、医療費の高いアメリカで、万が一大きな病気をしたら、たいへんなことになる。それで家計に負担があっても、保険に入る人が多い。

 

●中国系の保険会社は比較的安い

事 例 

困った 日系の保険会社より中国系の保険会社のほうが安くてサービスも良いので、そちらを利用している。

アドバイス日系の保険会社と比べ、中国系の保険会社は、商売熱心で、経済的に苦労している中国人の顧客が多いことなどもあり、保険料の安い商品を提供している保険会社が多いという。相性があえば、利用の価値は高い。

 

●保険のカードを半年経っても送ってこない

事 例

困った ある保険会社に加入したが、半年たっても保険カードを送ってこなくてとても困った。

アドバイス保険会社と契約を結んでも、きちんと事務処理をしてもらえないことがある。そんなときは、あきらめず交渉をする。

 

●保険の支払いは交渉次第?

事 例

はじめまして 子どもの治療が終わったあと、保険会社から請求書が来た。ものすごく高い金額で、とても払えないことから、電話で金額を下げる交渉を何度も何度もした。ほとんど闘い! 最終的には、担当者が折れて、こちら側の要求が通った。

アドバイス保険会社との交渉は、日本とは違って、粘ればなんとかなるということもある。高額な料金を請求され、納得できないと、何度も何度も保険会社とやりあって、最後には自分の言い値にさせたという武勇伝もよく聞かれる。

はじめまして ある家族は、緊急で治療を受けた。送られてきた請求書を見たら、とても経済的に払えない金額だった。そこで何度か担当者に電話をかけ、事情を説明したら、最終的には治療費を払わずにすんだという。

アドバイス日本では、ダメと言われたら黙ってひきさがるしかないが、アメリカという国の文化には、頑張った人の要求が通る可能性が残されている。逆に言えば、最初からあきらめてしまったり、気が弱かったり、遠慮がちだったり、情報が十分にない人からは、チャンスがどんどん遠のいていく厳しい世界ともいえる。

 

●保険の請求額は毎回確かめる

事 例

困った 保険会社から送られてくる請求額が間違っていることが多い。電話で文句をいってもなかなかとりあってくれないことが多いが、負けずに間違いを認めるまで交渉する。

アドバイス請求書は、保険に限らず電話やケーブルTVの料金などが間違って請求されることがよくあるので、必ず確かめる。間違っている場合は、はっきりと交渉する。また、わからないことは、はっきりわからないと言い、理解するまで聞くことが大切。

 

●出産時の保険の請求は別々

事 例

困った 無痛分娩で出産した。請求書は、小児科、産科、麻酔科、検査科からそれぞれ出される。退院後、保険会社がきちんと費用を支払ってくれたか心配で病院に電話して確認した。

 

●医療費の割引もある

事 例

はじめまして 医師から今回は帝王切開で産んだほうがよいと言わた。保険に入っていなかったので、7000ドルから8000ドルかかると言われ、困ってしまった。しかし、医療コーディネーターに、退院時に現金で一括で支払うと4000ドルから5000ドルに割引されるパック料金があると教えてもらった。

アドバイス病院によっては、出産の場合、自費で払う場合は、退院時に現金で一括払いにすると割引してくれる制度があるので、事前に確認をしておく。

 

●自分と考え方の似ている医師を探す

事 例

はじめまして Aさんが今、かかっている内科の医師は、いつも納得のいく治療方法を紹介してくれる。あるとき、外科医にかからなければならなったので、かかりつけの医師に相談すると、医療に対し同じような考え方をしている医師を紹介してくれ、満足のいく治療が受けられた。

アドバイスアメリカの医師は、保険制度の関係で、他の分野の医師らとひとつの医療グループを形成していることが多い。ときには、考え方が似ている医師らがグループを作っていることもあり、自分と同じ考えの医師がひとりみつかると、そこから他分野でも同様の考え方を持った医師にあえる可能性がでてくる。

ある母親の感想。

はじめまして「アメリカは医療のレベルが高いため、情報をきちんと集め、自分と似た考え方をする医師やそのグループを探し出すことで、最高の医療を受けることも可能だ」

 

2節 病院

 今回の視察で訪問した医療機関は、日常よくある疾患に対するプライマリケアを提供する開業医が中心であり、サンノゼで訪問したValley Medical Centerも、その中に設置されているParents Helping Parents(第3節参照)の事務所を視察することが目的であった。しかし未熟児センターのCohen医師の好意により、未熟児室も見学することができた。

 Valley Medical Centerは最近建て直された白亜の近代的な病院である。スタンフォード大学の教育病院でもあり、多くのレジデントが働いている。未熟児室も最新式の保育器やモニター類が合理的に配置されている(写真3)。主に低所得層の患者が多く、少なくとも未熟児室に関する限り、ヒスパニック系の患者が多かった。

 未熟児センターや、その中の医療機器は、最近の日本の未熟児センターとあまり変わらなかったが、透明な保育器に入っている乳児への無用の刺激をさけるためか、照明をかなり落としてあり、薄暗いのが印象的であった。また母児のアタッチメントを促進するためか、多数の母親が自分の子どもの入っている保育器のそばに付き添っている光景も印象に残った。

 未熟児センターの引き続いて、一般病棟も見学したが、広々とした廊下が日本の込み合った病棟を見なれている目にはなにかガランと物さびしく映った。付き添いの家族が病室に泊れるように壁に折り畳んで収納できるベッドが標準装備されていた。基準看護によって、未だ家族の付き添いを避ける方向に進んでいる日本と異なり、入院中の子どものQOLに配慮した病室構造であった。

 このほか病棟には子どものプレイセンターがあり、おもちゃや調理器具、本などがおいてあり、看護師の資格ももつスペシャリストが常駐し、随時訪れる入院中の子ども達に対応していた。

 

3節 障害のある子どもへのサービス

 アメリカのアメリカ障害者法(American Disability Act)では、障害者が非障害者と制度の上で同等の権利をもつだけでなく、実生活における権利の実現が義務づけられている。実際、アメリカではその実現へ向けての体制づくりが確立されているが、それでも障害をもった子どもの家族の苦労は多い。今回私たちは障害のある子どもの親が設立したNPOうち、最大の組織の一つであるParents Helping ParentsPHPの本部を視察した。

 PHPは今から25年前に、現在の会長(水頭症による知的障害と情緒障害をもつ息子さんがいる)を含めて3人の障害のある子どもとその親によって設立された。以来、医療機関では決して教えてもらえない日常生活上の苦労や、地域社会で生きてゆくための知恵を共有しよう、というPHPの趣意に賛同する多くの家族が会員になり、現在では(写真6)にあるような立派な本部に60名以上の職員を抱える団体に成長している。

 活動内容の主体は障害のある子どもの親への様々な情報提供である。パンフレット、情報誌、ビデオによって、個々の障害についての幅広い情報を提供するだけでなく、専門書、解説書をふんだんにそろえた図書館の開設の他、ホームページ上における情報公開などを行っている。このようなPHPの活動の中で特にここでご紹介したいのは、あまり日本では例を見ない次の3つの活動である。

 

●相談室

 まず、一番印象的だった活動は、地域の病院内に設けたPHPの相談室である。相談室には、相談員の資格を持つPHPの専任職員が常駐しており、医師からはあまり聞くことのできない、日常生活や教育などについての情報提供やアドバイスをしてくれる。慢性の病気やさまざまな障害が原因で入院した子どもの親は、多くは主治医の紹介でここへ相談に訪れ、病気や障害についての説明を受けている。また、パンフレットやビデオなど、病気や障害に関する啓蒙資料もここで入手することができる。時には相談員が直接病室を訪問することもあるそうだ。

●人形劇 

 PHPには人形劇を担当する部門がある。(写真8)はその部屋で、様々な病気や障害をもつ人を模した人形が見える。中央には重症の火傷を負った女の子の人形、左端には車椅子に座った人形が見える。(こうした人形を専門に制作・販売している団体があるそうだ)PHPでは学校や幼稚園を巡回し、これらの人形を使った人形劇によって、さまざまな病気や障害について子ども達に理解を促している。

 ●コンピュータ

 PHPにはコンピュータなどの先進機器やソフトの作成、その使用法を教授する部門もある。写真9はその部屋である。ここでは使用法の指導のほか、手足に障害を持つ子どものための特別なキーボードの作成や、コンピュータソフトの開発なども、ボランティアの学生の助けを借りて行っている。

 もともとPHPの活動は脳性麻痺やダウン症などの精神遅滞や運動障害も子どもへの支援が中心だったようだが、現在はアスペルガー障害などの発達障害や、行為障害のような心理、精神障害をもつ子ども達へのサポートを始めている。

 さらに英語のできない家族に対しては、様々なエスニックグループの言葉を解する会員がサポートを行っている。今回の視察でも、中心的な会員のひとりである一枝ローエンステインさんが、通訳をかねて案内してくれた。一枝さんは、PHPの日本人グループの代表でもある。このPHP日本人グループでは日本語版のPHPのニュースレターの発行も行っている。

 障害のある子どもをつれての海外渡航は通常大きな困難を伴うが、PHPようなNPOの発達しているアメリカでは、こうしたグループを地元で見つけることができれば、かえって日本より生活しやすいかもしれない、という印象をもった。

 

 サンノゼ市とロサンゼルス市の日本人医師  

 外国で子どもが病気になったとき、一番困るのが言葉の問題である。日常会話ができても病気ということになると、普段使わない医学用語を使わなければならず、また緊急を要するときにうまく子どもの状態を伝えることは母国語でも難しい。

 その点もともと日系人の多いカリフォルニアの大都市に長期滞在する日本人は幸運といってよい。シリコンバレーの隆盛によって今やカリフォルニア州でロサンゼルスに次いで2番目の人口を持つサンノゼ市には、3人の日本語を解する小児科、内科医がいる。

 今回視察のトップバッターとなった吉田隆医師(写真1)と市下スティーブン医師(写真2)はともに日本語で診療を行うことができる。吉田医師は日本の大学を卒業し日本で医師になった生っ粋の日本人医師であり、市下先生は日系3世の医師である。市下先生の母国語は英語だが、日本語も流暢に話される。

 吉田先生は小児科専門医であり、市下先生は一般内科医(含・小児)であるために、その内容は異なるが、日本の小児科、内科の開業医とほぼ同じような医療サービスを行っている。吉田先生は1ヵ月に約600名、市下先生は400名の患者を診察している。吉田先生の患者の90%は日本人の子どもであるが、市下先生は日本企業との法人契約によって成人の患者が主体になっている。診療時間は月?金(吉田先生は隔週土曜の午前も診察する)で、市下先生は8時〜17時、吉田先生は9時〜1730分と日本と変わりない。