



トニー君の住む町では、夏休みになると、誰もが参加できる合奏の短期集中クラスが開かれる。一ヶ月間、月曜日から金曜日の朝8時から12時まで、みっちり合奏の練習をするのだ。
他の町では、このようなクラスには、選ばれた子どもしか参加できないが、この町では、希望する子どもは、障害があってもなくても参加することができる。
トニー君は、このクラスに2年連続で参加していたので、合奏の雰囲気にはとてもよく慣れていた。母親は、連日、トニー君につきそって、「勝手に音を出してはいけないとき」、「静かに座っていなければいけないとき」などを教えていった。
こんなエピソードもある。
ヴァイオリンは、普通、いちばん最初に音を出すときに、弦を上からさっと振りおろすように下に引いて音を出す。そのときの指揮者からの指示は、「ダウン」。
だが、ある日、それまでとは違って、例外的に弦を下から上に一気に引いて音を出さなければならない練習になった。そのときの支持は、「アップ」。
ところが、トニー君は、「アップ」と言われたとき、弦を下から上に引くのではなく、「手を上に上げろ」といわれたと思って、思わず弦を持ったまま手を上げてしまった。
それを見て、担当者の人は、思わずにっこりしていたという。障害があってもなくても、平等に子どもたちを受け入れているサンノゼの夏の音楽教室は、音楽の技術を伸ばすだけでなく、人の心を育てることが第一の目的に違いない。
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