drsears2.jpg (8913 バイト)

 

執筆者:ドクター・ウィリアム シアーズ

シアーズ博士は、アメリカで最も信頼されていう小児科医の1人で、8人の子ども達の父親でもある。また30冊以上の育児書を執筆しており、中でも“The Baby Book”は、育児書バイブルとしてアメリカでベストセラーとなっている(「ベビーブック」として日本でも翻訳出版されている)。

執筆                子育て雑誌 “BabyTalk” “Parenting”
テレビ出演  "20/20," "Good Morning America" "Oprah Winfrey" "Today Show" "Dateline" その他多数

シアーズ博士の躾23章のエッセイ

第2章  躾の大切な10箇条

第1箇条.早期に子どもとの良い関係を築く

躾は親子の健康的な関係が土台となります。いかに子どもを躾るかを知るためには、まず子どものことを知らなければなりません。このような知恵は親の心の奥深くに既存のものです。それを本能と呼ぶ人もいるかもしれません。しかしながらそのような言葉は一種神秘的であり親を混乱させます。(「どうしたら自分の本能を信じることができるのか?一体私にそんなものがあるのかさえわからない。」)

「コネクション(つながり、関係、交わり)」という言葉はより理解しやすいです。親子のスキンシップを多く取るアタッチメント育児と呼ばれる育児法では、親子のコネクションを強くすることができ、躾の土台ができます。

子どもとのコネクションがきちんとできている親は自分の子どもに対するエキスパートとなり、こどもの行動に期待するべき節度を知り、その期待をいかに子どもに伝えるかを知ります。親とのコネクションがしっかりできている子どもは、どのような行動を親が期待しているのかを知り、その期待に添うために努力します。なぜなら子どもというものは親を喜ばせたいと思っているからです。このような親子は共に自分達に合った躾のスタイルを作っていきます。

親として子どもの行動を正しく解釈し、適切に対処できるようになるために、あなたの赤ちゃんや子どもとどのようにコネクションを作ればいいかを説明しましょう。それによって、親子がお互いに自分達のために最も良いものを引き出すことができるのです。


第2箇条.自分の子どもを知る. (KNOW YOUR CHILD)

KNOW YOUR CHILD これは躾において最も役立つ3語です。子ども観察してください。様々な年齢における子どものニーズや能力を知ってください。子どもののニーズは成長段階によって変わるので躾のテクニックも自然と変わることになります。8歳の子がカンシャクを起こした場合と2歳の子が癇癪を起こした場合とでは当然その対処法は違ってきます。

年齢相応の行動を知る

子どもとの多くの問題は親が子どもをあたかも大人のように考え、ふるまうことを期待することから生じます。本当に子どもが常軌を逸した行動をしているのかを見分けるために、子どものそれぞれの発達段階において、どんな行動が一般的であるのかを知る必要があります。

私たちの場合、一人目の子の時よりも、8人目の子の時の方が躾は、はるかに簡単でした。それは、ひとえに、子どものどの行動が親の指導や忍耐やユーモアを必要とするのか、どの行動がより厳しく、改めさせることを必要とするのかの対応法を経験から既に熟知していたためです。私たちは子どもの年や発達段階には必ず起こりうる事柄(たとえば、ほとんどの2歳児は長い間レストランにじっと座っていることはできません。)に関しては寛容な態度をとり、子ども自身や他人に危害をもたしたり、失礼な態度(例えば、テーブルの上に上がらないなど)に対してはその行動を改めさせました。


子どもの視点でものを見る

子どもは大人と同じようには考えません。子どもは、少なくとも大人の常識から見れば信じられないようなことを考えたりしてみたりするものです。もし子どもの行動を大人の視点から判断したら、いらいらしたり、頭に血が上ることばかりでしょう。道路に飛び出してしまう2歳児は親に逆らったり、無視したりしているわけではなく、ただ道路に転がり出てしまったボールを取り戻したいだけなのです。衝動によって行動を起こしてしまう。その両者の間には何の考えもないのです。でも5歳児なら友達のおもちゃが気に入ったとすればそれを「借りる」ことができます。大人が、何らかの行動を取る時は、その行動の必要性、安全性、道徳性を計りにかけながら止めることができるかもしれないことが、小さな子どもにはできないのです。

私たちの息子マシューは、非常に集中力のある子でした。遊びに夢中になってしまうと、遊びを止める時間になっても、その場を去ることがなかなかできませんでした。ある日、彼が遊んでいた時、出かける時間になりました。(私たちは約束の時間に遅れていました。)妻のマーサは、マシューを抱き上げてドアまで連れて行き意気ました。マシューは典型的な2歳児がするように癇癪を起こして反抗しました。最初のうち妻はいつもの「私が親なんだから私が決めて当然。」という気持ちで、自身の行動を正当化し、マシューがすぐに彼女に従い、遊んでいたおもちゃをあきらめることを期待しました。しかし泣き喚く子どもをドアまで運んでいるうちに、妻は彼女の躾の計りがバランスを失っており、最良の方法で事態を扱っていないことに気づきました。彼女の行動は彼女自身の出かけなければならないという必要性から出ており、マシューの必要性--事前に次に何が起こるのかを知ることや、一つの行動から次の行動への、より緩やかな移行--を考慮に入れていなかったのです。たとえ私たちにデッドラインがあったとしても、マシューは素早くギアチェンジができる性格ではないということを妻は気づきました。彼は自分自身に忠実な行動を取っていただけだったのです。マシューには自分のやっていたことを中断するためにもっと時間が必要だったのです。

そこで妻は静かに遊んでいた所にマシューを連れ戻し、一緒に座って「おもちゃバイバイ、トラックバイバイ、車バイバイ」と、マッシュ-が取り組んでいたことを抵抗なく後にすることができるまで言い続けました。それにかかった時間はたったの数分で、恐らくそうしなかったなら、同じだけの時間が車の中でマシューと挌闘するために無駄にされたことでしょう。この出来事の最後に妻のマーサは、マシューをほとんどせかすことなく家を出るという、彼女自身が欲したことを実行することができ気分が良かったと言っていました。同時に彼女は、子どもにかんしゃくを起こすことなく、ある行動から自分自身を解放する方法を教えたのでした。これが本当の意味の躾です。

決断する際に、子どものニーズを考慮に入れた場合、躾がずっとうまく機能することを理解できたことは、私たちにとっては大きな転換点でした。もともと、私たちは子どものニーズを考慮に入れていたら、そのうち子どもが私たち親を心理的にコントロールするようになるのではないかという恐れを持っていました。なぜなら、それまでの私達は、良い親というものはいつも子どもを上手に管理しているものだという考え方を本で読んだり、人から聞いたりし、またそのように育ってきたからです。

けれども、私たちは子どもの視点を考慮すると、子どもはより抵抗なく親の言うことを聞くようになるということを発見しました。子どもを知ることが、いかに子どもを躾るかの鍵となったのです。子どもは親が自分たちの視点を考慮してくれ、従いやすいように手助けをしてくれているということがわかり、親が自分達の管理者であるということを知るのです。そして少しの疑いもなくママとダディーが自分達にとって何がベストかを知っていると信じるのです。

第3箇条. 子どもが敬えるような親になる

親が子どもの良き監督であることは、躾の基礎の基礎です。けれども、親になったからと言って、子どもたちが、その人生を任せる監督として自動的に親を信頼するわけではありません。

「言うことを聞かないと、(罰を与える)・・・」と言われて育つ子どもは、親の言うことに従うかもしれませんが、それは親への敬意から出たものではなく、恐怖心から出たものです。「父や母を恐れなさい。」ではなく、「父や母を尊びなさい。」という言葉は古くから言われてきた先人の知恵です。親が尊ぶ存在であってこそ、親に敬意を抱くこともでき、従うこともできるのです。

では、どうしたら子どもが親を敬うようになるのでしょう?敬われるべき人物は心温かく、そして賢くなければなりません。まず、子どもとの絆を結びましょう。赤ちゃんを慈しみ、安心させる対象となることから始めましょう。

ある人物に敬意を示すためには、その人物との間に信頼関係がなければなりません。一旦、あなたの子どもが、あなたを自分の必要を満たしてくれる人物として信用したなら、リミット(制限)を示してくれる人としても信用することでしょう。

私は、ある日、親としての威厳を持ち、自信に満ちた様子の母親になぜ、そのように自信が持てるのかと尋ねたことがありました。彼女は「自分の子どもを、よく知っているからこそ自信が持てるのです。」と答えました。彼女は子どものことを理解しているので、賢く子どもを導くことができ、子どもも素直に自分の言うことに従うということを知っているのです。

多くの親は管理する立場にあるということに戸惑います。尊敬に価する賢い人物は、直接子どもを管理するのではなく、子ども自身が自分をコントロールすることを学びやすくするために、状況をコントロールすることを考えます。それに対し、子ども達は恐れや反抗ではなく、信頼と敬意をもって応えるのです。

第4箇条 リミットを設ける。秩序ある環境作り

規則を作る際、同時に子どもがその規則を守りやすいような状況を作ってやることが大切です。子どもは「ここまでならやって良い。これ以上はやってはいけない。」というようなリミットを必要とします。もし、子どもが、その行動に何のリミットも与えられなかったとしたら、無事成長することはできません。親も、子どもに何でも無制限に許していたら、たまらないはずです。子どものいる環境をうまくコントロールしてやることは親としての勤めです。賢明なリミットを設け、秩序を作ってやることです。それはそのような制限に従いやすいような家庭の雰囲気を作ることです。

たとえば、よちよち歩きを始めたばかりの子どもに対して「リミットを設ける」ということは、探索好きの子どもが危険なことに手を出してしまいそうな時に「NO」と言うことです。子どもがその規則に従いやすくしてやる「秩序ある環境作り」ということにおいては、好奇心旺盛なこの時期の子が安全に遊んだり学んだりできる環境を家の中に整えてやることです。


第5箇条 従うことと親の期待

子どもは、親が期待するのと同じ程度に従順になり、親が許すのと同じ程度に反抗的になります。聞き分けの良い子どもを持った親たちに「なぜ、あなたの子ども達は聞き分けが良いのですか?」と尋ねると全ての親達が「それは私達が子ども達にそうすることを期待するからです。」と答えます。非常に単純なことですが、多くの親はこの躾の基本的な事実をなおざりにしています。そういう親に限って「忙し過ぎるから、うちの子は頑固だから。そういう年だから。」と言い訳をします。

幼ない子どもは、親が教えてやるまで、どんな行動が適切なのか、または不適切なのかがわかりません。ある夜、私達はレストランで2組の家族がまったく同じような躾の場面において2つの違った方法を取っているところに遭遇しました。

2歳半位の子がブース・シートに何度も登ろうとしていました。それが、近くの席に座っていた人の迷惑になる段になって、初めて親が弱々しく「やめなさい。」と言いましたが、そんなことで子どもは全く止めようとしません。この子どもが椅子の背もたれによじ登ることが不適切な行動であるということを、全く理解していないのは明らかでした。ここで子どもが親から受け取ったメッセージは「登ってほしくないけど、登ったとしてもお父さんもお母さんも何もしませんよ。」というものでした。

もう一組の家族の2歳半位の子どもは親から違うメッセージを受け取り、違う行動を示しました。親は父親の横に子どもを座らせ、頻繁に子どもに注意を向けていました。そして家族の会話に子どもを入れるようにしていました。幼児が椅子の背もたれによじ登ろうとするやいなや、父親は息子の方向を変え、静かに自分のシーとに戻していました。子どもの気を楽しく紛らわしてやることと、子どもを尊重しつつ行われた制止の、うまいコンビネーションによって、ブースの背もたれによじ登ることは隣の人の迷惑になるので、登ってはいけないという親のメッセージを伝えていました。子どもは、シートに登る行為は、適切ではないというメッセージを受け取ったのです。こうして子どもの記憶庫に納められた経験は、次にレストランに行ってシートに登ろうとした時に、引き出されることでしょう。

2番目の家族の親は子どもの行動を管理していましたか?答えはYesですが、適切な方法で行っていました。子どもが従うように無理やり親の意志を押し付ける場合は、それは管理する権利を乱用していることになり、親子関係を損なうことになります。子どもが従うことを強調し、子どもの自制心を養う手助けをする場合、あなたは子どもに対する親としての力を正しい方法で使っているのです。覚えておいて欲しいことは、子どもは親にリミットを設けてほしいのです。そうでないと自分自身の心が手におえなくなる、制御しきれなくなると感じるからです。子どもは、親がどこまでリミットを守るかを試し続けます。そしてもし、あなたがそのリミットを守らなければ、子どもは誰も自分を抑制するだけの力がないと思い不安になります。子どもにとって、それは恐ろしいことなのです。

 

第6箇条  子供の模範となることが躾です

模範とは子どもが真似する例となるものです。成長期の子どもの心はスポンジのように人生の経験を吸いとって行きます。子どもの心は、目や耳にしたもの全てをとらえるビデオカメラのようなものであり、それを心の引き出しに後で引き出せるように、しまっておくのです。特に子どもの人生の中の重要人物によって頻繁に繰り返されたイメージは、子どもの心にしっかりと記憶され子ども自身の人格の一部となります。ですので、子どもが吸収すべき良い材料を提供することが親としての勤めの一つとなります。

「でも、私は完璧な人物じゃないから。」と言う声が聞こえそうですね。もちろんです。完璧な親なんていません。この章を書いている最中にも、妻のマーサと私は「わたし達はこんなにたくさんのことを知っているけれども、いまだに間違いをおかすね。」と言うこともしばしばです。実際、親も子どもも達成不可能な完璧なゴールを模範とすることは不健康なことです。多くの子どもは、完璧にゴールは却って子どもをだめにしてしまいます。子どもは、完璧なゴールのために、しょっちゅう失敗したり激しく叱責されるのではなく、正当な評価を受けることが大切なのです。

もし親が、まるで習慣のように怒っていたら、その怒りは子ども自身の一部となってしまいます。子どもは、これが人生への対処法だと学ぶんでしまうのです。もし親が、時には、くどくどと怒ることもあるけれでも、幸福で誠実であることを模範として示すなら、子どもは健康的な模範例を見ることになります。つまり、人は基本的には幸福であるということ、時には困難なことがあり怒ることもあるけれでも事態を処理した後は、再び幸福な状態に戻るということを学ぶのです。

親である皆さん。あなたがたは、子どもが出会う最初の人物です。そして最初に慈しんでやる人であり、最初の権威ある人であり、最初の遊び相手であり、最初の男性、女性なのです。子どもは、あなたから敬意に価するとはどういうことかを学び、友達との遊び方を学び、男女のアイデンティティーを学ぶのです。あなたの一部が子どもの一部になるのです。そうです。多くの子どもの行動は大体が親から引き継いだものなのです。「ウチの子は、随分、私達親とは違う。」と言うコメントをよく耳にしますが、やはり、子どものほとんどの行動は、その模範である親の影響を受けているのです。

第7箇条 子供の自尊心を養う

ポジティブ(肯定的)な自己イメージを持ちながら成長する子どもは、そうでない子どもよりも躾やすいといえます。自分を価値ある人間だと思っているので、ふるまいも自ずと価値あるものとなります。時には曲がった道に行きそうになる気持ちを抑え、正しくあろうとする気持ちを維持することができます。このような子供は、たとえ間違った行いをしたとしても、あまり罰せられることなく、より早く元の正しい道へと戻ってきます。

しかし貧弱な自己イメージしか持っていない子供は、自分自身に対して自信もなく、正しい行いができません。その親は子どもを信頼しないため、子どもも自分自身を信じることができません。誰も、その子に良い行いを期待しないので、良い行動を取ろうとはしません。このようにして悪いサイクルが始まります。つまり間違った行動を取れば取るほど、罰せられることも増え、それが子供の怒りを増幅させ、自己イメージはさらに低くなり、さらに悪い行いへと走るのです。

私達が最初から子どもの心の中にある善良なるものをさらに伸ばすことに躾の焦点を当てるというアプローチを取るのはこういうわけです。人生を通して、子どもは、自己の存在価値を高めてくれる様々な人や出来事、その反対に自己の存在価値を削り取ってしまうような様々な人や出来事に出会い続けることでしょう。私達は、前者を“builders(建設者)”と呼び、後者を“breaker(破壊者)”と呼びます。私達は皆さんが、子どもが破壊者よりも、より多くの建設者に出会えるような環境を作る手助けをするとともに、もちろん皆さん自身も建設者になる手助けをしたいと思っています。

第8箇条. 子どもの行動を形づくるもの

賢い親というのは、自分の庭にあるものを大切に育てるとともに、庭にどんな植物を植えたらいいのかを決めるガーデン・コーディネーターのようなものです。ガーデン・コーディネーターは、花がいつ開花し、どんな香りを放ち、どんな色の花をつけるか、などという花の特徴自体をコントロールすることはできないことを知っていますが、他の植物を植えることによって色を沿え、いかに庭を美しくするかを心得ています。

全ての子どもの行動には花もあり雑草もあります。時には花があまりに美しく咲くために雑草に気づかないことさえあります。でも時には、雑草が花壇を乗っ取ってしまうこともあります。ガーデン・コーディネーターは花に水をやり、まっすぐに育つように添え木をし、花が最大限に開花するように剪定し、除草を怠りません。

子どもは、どのように育てられるかによって、美しく開花もすれば、雑草として取り除かれてしまうような行動的特徴を持って生まれます。たとえ生まれ持った特徴でなくとも植え付けられ、立派に育つこともあります。これら全てのことが、子どもの性格形成に関わってくるのです。親としてのガーデニングの道具は、私達がシェーパー(形を作るもの)と呼ぶテクニックです。それは、昔から多くの親が使ってきて、うまくいくことが保証済みの毎日の様々な状況において子どもの行動を向上させる方法なのです。これらのシェ-パーは、あなたの子どもの向上を妨げている行動を取り除き、子どもの成長を助ける資質を養い育てるのです。

子どもの行動を形成するのに最も大切なのは「原因と結果」です。(例えば、もしビリーの部屋が汚いなら「片付けるまで外で遊んではいけません。」と母親がいうことです。)やがて、子どもはこのようなシェ−パーを自分の中に取り入れ、自らの「原因と結果」というシステムを発展させ、自分の行動の結果の責任を取ることを学びます。(部屋が汚いと、遊んでいても楽しくないから、片付けた方がいい。)というように自分自身の行動を片付けすることを学ぶのです。

それぞれの発達の段階において、あなたの小さな庭が必要とするものによって、形付けをする道具は変化します。後の「躾の章」で、子どもの行動を親が自信を持っていかに形付けするか、子どもの性格が子ども自らの利益となるように働き、庭という生命体に貢献する、より好ましい人間になるかのアドバイスをしましょう。

第9箇条 深慮できる子どもに育てる

道徳心のある子どもとは、責任感や良心があること、そして他人のニーズや権利に対し敏感であるということです。道徳心のある子どもは正悪の判断を下すことができ、それが自らの幸福感にもつながっています。そのような子どもは心の中で「正しい行いをすると気分がいい。間違った行いをすると気分が悪い。」ということを知っています。

道徳心のある子どもの基礎は、自分のとった行動がどのように他人に影響を与えるかを予期し、実際の行動に移す前に考慮できる能力を持ち合わせるとともに、自分に対しても他人に対しても配慮ができることです。他人の権利と感情に共感し考慮することのできる能力の伸ばしてやれば、それは将来子どもにとって最も役立つ社会的技術となります。子ども達は彼ら自身に共感を持って接してくれる人から、共感するということを学びます。良き市民を育てる最善の方法の一つは感受性の豊かな子ども達を育てることなのです。

他人や物事に対する責任感を教えることに加え、自分自身に対して責任を取ることも教えましょう。親が子どもに与えることのできる最も価値ある道具は賢い選択をする能力です。子どもが常に、これからやろうとしていることをよく考える、そういった安全確認システムを子どもの心に育てておいてあげたいものです。小さな物事において自分の行動の責任をとることを学ぶことによって、より重大な結果を招く物事において正しい選択をする準備ができるのです。深く考えることのできる子どもを育てることが私達の願いです。

第10箇条(最終章) 話すことと聞くこと

親の言うことに耳を貸さないような子にならないよう、子どもとよくコミュニケーションをとりましょう。躾上手な人は、子どもとコミュニケーションをとることに優れています。同じ指示を与えるにしても、より子どもの気持ちを考慮した言葉を選べば、子どもは反抗せず、素直に従うでしょう。躾上手な人は、閉じた子どもの心の開きかたを知っています。そして子どもの気持ちを尊重して話すという黄金の法則を心得ているです。

いかに子どもと話をするかを学ぶことと同じ位大切なことが、いかに子どもの話を聞くかです。子どもの視点を重んじているということを子どもに知らせることは、子どもの心を勝ち取るためになくなてならないものです。子どもに対する責任を負っているということイコール、子どもをけなしてもいいということではないのです。

今までにあげてきた全ての躾のポイントは、互いに補強し合うものです。もし子どもとあなたの心が通じておらず、子どものことを知らなければ、威厳を持ち、良き手本となり、子ども行動を形作り、子どもが素直に従えるような親になることはできません。もしかしたら、あなたは子どもの行動を形作るための理論は知っているかもしれませんが、実際に子どもとコミュニケートできなければそれは無用の長物です。そしてたとえば子どもとの密接な関係を築いていたとしても、もしあなたが、子どもは親の言うことに従うべきだという期待を子どもに伝えることができなければ、きちんと躾けることはできないのです。

今までに紹介した10の躾け方は、躾けのために土台を形作る一つ一つのレンガのようなものです。全てを積み重ねて、初めて今、あなたに喜びを与えてくれている子どもを、そして将来あなたが誇りに思う子どもを育てる青写真ができるのです。

 

第1章  躾とは何か?

  • 良い人生を送るための道具を与えること

  • 子どもとの暮らしを楽しいものにするために、やらなければならないことは何でもすること

  • 正しい技術を使うことを基本とするのではなく、子どもとの正しい関係を築くことを基本として行うこと

  • 子どもが一生を通して維持できる自制心を養う手助けをすること

    ある日、病院の待合室にいた家族を眺めていました。幼い男の子が母親から1メートルほど離れた所で楽しそうに遊んでいました。男の子は、頻繁に母親の膝に戻ってきては、まるで心の燃料補給をしたかのように、再び母親の元を飛び出し遊びに没頭するのでした。彼は、冒険して、お母さんとの距離を広げていきながらも、お母さんの許可を求めるように何度も振り返っていました。お母さんは、男の子にうなずき微笑むことで「大丈夫」と言うことを伝えていました。すると、彼は、自信を持って新しいおもちゃを試すのでした。

    何回か、男の子が不適切な行動を取ることがありましたが、お母さんは男の子と目と目を合わせ、それがいけないことだと伝え、お父さんは、直接、男の子のところまで行って、今やっている行いを変える必要があるということを行動ではっきりと示していました。子どもは満たされており、両親には心地よい権威がありました。家族が、とても良い関係にあるということは、すぐに見て取れました。私は、それを見てどうしても誉めたいという衝動にかられ「お二人とも躾上手ですね。"You are good disciplinarians." 」と言いました。すると父親は、驚いて「でも、私達は子どものお尻を叩いてはいませんよ。」と言ったのです。

    「躾」"discipline"という言葉を、私とその夫婦は、明らかに別の意味で理解していました。他の多くの親がそうであるように、彼らは躾とは悪い行いをたしなめるために行うものと同意義で理解していたのです。躾が、大抵の場合、良い行いをさらに奨励するために行うものだとは理解していませんでした。躾とは子どもがつまずいてコブや擦り傷をこしらえしまってから、そこにバンソウコウを貼ってあげるようなものではなく、子どもが、まず転ばないようにしてあげるためのものなのです。

    躾は、親が子どもの心に植えつけてあげる様々なものであり、それは将来子どもがどのような人物になるかに影響を与えることになるものです。あなたは、子どもが、どのように育って欲しいと思っていますか。あなたが望むように子どもが育ってくれるには、あなたが子どもにしてあげられることは何でしょうか。

    親としての究極の目的は何であろうと、子どもの人生を通して維持することのできる自制心を育ててあげる手助けになるようなことを子どもの心の深くに植えつけなければなりません。子どもが40歳になった時に軌道を逸した行動をとらないようにするために4歳の時に自分自身を制御するガイダンスとなるシステムがいるのです。そして、そのシステムが、こどもの一部となり、こどもの全人格と統合されるとことを望みたいものです。もし子どもの人生をビデオに治め、10〜20年分を早送りするとしたら、そのビデオの映像の中にどんな成人の姿を見たいでしょうか。以下は私達の子どもへの願いごとのリストです。

  • 繊細さ

  • ユーモアのセンス

  • 自信としっかりした自尊心(self−esteem)

  • ゴールに焦点を当てる力

  • 正しい選択をする賢さ

  • 誠実さ、円満な人格

  • 親しい関係を他人と結ぶことのできる能力

  • 健康的な性的観念

  • 高い価値を持つと認めたもに対する尊敬

  • 責任感

  • 問題を解く力

  • 学ぶ意欲

次回は・・・「躾の方針トップ10」「なぜ歩き始めた子どもは躾がしにくいか、発達段階から見た8つの理由」・・・・・

 

(注)アタッチメント・ペアレンティングというのは、博士によって生み出された育児における新しい言葉です。日本での出版を記念して来日したシアーズ博士は「34年にわたる親業で8人の子どもを育て、・アタッチメント・ペアレンティング・というスタイルに気づいたのです」と語っています。日本語にそのまま翻訳することは難しい言葉ですが、この言葉に含まれる博士の意図した意味は「赤ちゃんと肌を密着させる。常に一緒いる育児」ということです。以下、アタッチメント育児と表記します。

また、Sears博士は、ところどころで「私達は、・・・と思う」というように、二人称を使っておられます。それは、Sears博士の妻であるマーサさんが、看護婦そしてラ・レーチェ・リーグ(母乳育児のサポート団体)のリーダーであり、共に8人の子ども(養子を含む)を育てた経験から共著も数々あるためです。

ATTACHMENT PARENTING

親子の絆を深めるアタッチメント育児

7つのBABY B

赤ちゃんから最善のものを、そして親から最善のものを引き出す育児スタイルを私は、アタッチメント育児と呼んでいます。今回は、赤ちゃんの絆をより深めるための7つの方法をご紹介しましょう。

Birth bonding 出産直後に築く絆

赤ちゃんと両親がお互いにどのようなスタートを切るかが、その後の親子の早期の絆の形成に大切な役割を果たします。赤ちゃん誕生後の数日そして数週間は、赤ちゃんとお母さんがお互いに親しみ合いたいと欲するための繊細な準備期間です。赤ちゃんの誕生直後の期間の母子の肌の触れ合いは、乳児のより絆を深めようとする自然で生物学的な行動と、母親の赤ちゃんの世話をしようとする直感的、生物学的な資質を調和させる手助けをします。この生物学的ペアの両者は、乳児が最も他者の手助けを必要とし、母親が最も乳児を育(はぐく)もうとしている時に、正しい第1歩を踏み出すのです。

出産直後の併発症などで赤ちゃんと母親がしばらく離れ離れになってしまうこともありますが、できるだけ早く絆を深める努力をすれば大丈夫です。母子の絆を深めるという育児概念は20年ほど前に初めて紹介されましたが、バランスを欠いた受け取り方をした人もいました。

translucent.gif (967 バイト)
babybook.gif (5318 バイト) babybook2.jpg (2961 バイト)
主婦の友社発行
\3,400

The Baby Book: Everything You Need to Know About Your Baby from Birth to Age Two

現役の小児科医、8人の子どもの父親として妻マーサ(看護婦、母乳コンサルタント、出産エデュケーター)とともに執筆した育児書。いいお産、医師の選び方、授乳、離乳、2足歩行、言語の発達、トイレットレーニング、成長段階別の子どもとの遊び方、赤ちゃんの病気まで0〜2歳児に関するあらゆるトピックを網羅し科学的根拠に基づいて詳しく解説されており、何冊もの育児書や雑誌を買うよりは、これ1冊で安心して出産から育児まで理解できる子育てバイブルである。

人間の絆を築くには、絶対的な「臨界期間」があり、「今やらなければ絶対に起こらない」という取り方をした人々もいましたが、それは間違った解釈です。誕生直後の母子の絆作りは母子の関係を永遠にセメントのように固めてしまうものではありません。絆は子どの成長とともに一生をかけて1歩1歩築いていくものなのです。誕生直後の絆作りは、単に母親と乳児の関係を先取りするに過ぎないのです。

Breastfeeding: 母乳育児

母乳育児は、赤ちゃんの心を読むエクササイズです。母乳育児は赤ちゃんが発している合図や、赤ちゃんのボディーランゲージを解読する手助けをしてくれます。それは赤ちゃんを知るための第1歩なのです。母乳育児は赤ちゃんと母親がその人生の中でできる賢い出発です。母乳は製造したり購入したりすることのできない脳の発達を促すユニークな栄養素を含んでいます。母乳育児は、母体を刺激することにより母性を高めるためのホルモンプロラクチンとオキシトシンの生産を促し母親と赤ちゃんの絆を深めるのです。

 

Babywearing: 赤ちゃんを着るように肌身につけて

赤ちゃんは忙しく動く自分を世話をしてくれる人からたくさんのことを学びます。常に抱っこやおんぶされている赤ちゃんは、むずかることも少なく、落ちついた状態で周りの状況に注意を払うという状態がより長くなります。これは赤ちゃんが自分の置かれた環境について学ぶ最も大切な動的状態です。Babywearingは親の感受性も向上させます。なぜなら赤ちゃんが自分の体に近ければ近いほど赤ちゃんをより知ることができるからです。近親感は親密度を向上させます。1日に数時間赤ちゃんを、*ベビースリングでCarry(運ぶ)またはWear(着る)してください。

*ベビー・スリング(baby-sling)・欧米でアタッチメント育児、母乳育児を目指す人達の間で人気の肩からかける赤ちゃん抱っこヒモ

Bedding close to baby: 赤ちゃんと添い寝

家族それぞれが最も熟睡できる場所がどこであろうと、それが個々の家族にとっての正しい取り決めです。添い寝は、昼間忙しい親が乳児との絆を深めるための夜の一時です。夜は小さな子どもたちにとっては、恐ろしい時間でもあるので触れるほど近くで寝たり、授乳することは、夜の母親からの分離不安を和らげ、赤ちゃんが快適な状態で眠りにつくこと、そして恐怖感のない眠りの状態を学ぶ手助けをするのです。

Belief : 信じる

赤ちゃんの泣き声の持つ言葉の価値を信じることです。赤ちゃんの泣き声は赤ちゃんが生き残るためそして親を育てるためにデザインされたシグナルです。赤ちゃんの泣き声に敏感に応えてあげることは赤ちゃんとの間の信頼を築くことです。赤ちゃんは、自分を世話してくれる人が自分のニーズに応えてくれることを信頼し、親は赤ちゃんのニーズに適切に応じていく能力が自分にあるという自身を徐々に学んでいきます。こうして親子のコミュニケーション・レベルは一段と高められるのです。小さい赤ちゃんは、親を操るために泣くのではなく、コミュニケーションを取るために泣くのです。

Beware of baby trainers: 赤ちゃん専門家のアドバイスに注意してください

アタッチメント育児では、赤ちゃんではなく、時計やスケジュールに注意を払い、ある程度泣かせれば泣き止むというような専門家のアドバイスをいかに無視するかを教えます。このような「(親にとって)都合の良い」育児は短期的には得るところがあるかもしれませんが、長い目で見たら失うものの方が多く、賢い投資とは言えません。このような、より拘束された育児スタイルは赤ちゃんとあたなの間の距離を生み、あなたがあなたの赤ちゃんのエキスパートになることを妨げるのです。

Balance: バランス。赤ちゃんにたくさんのものを与えたいというあふれるばかりの愛情によって、あなた自身とあなたの結婚生活のニーズは、たやすくおろそかになってしまいます。育児のバランスを保つための鍵は、赤ちゃんのニーズに対して適切に応えてあげるということです。それはyesと言う時とnoと言う時を知ることであり、それは、あなた自身が手助けを必要とする時に自分自身にYesと言う賢さを持つことでもあるのです。

 

アタッチメント育児についてさらに説明しましょう

Attachment Parenting(アタッチメント育児)は、育児の出発点となるスタイルです。健康上の理由や家族環境といった理由から、上記に述べた全てのBについて実践できない場合もあるでしょう。アタッチメント育児は、まず赤ちゃんの個々のニーズに魂と心を開くことです。そうすれば、やがてあなたには、自分と赤ちゃんにとってどうすれば一番うまく行くのかを即座に決められるほどの賢明さが育っていくことでしょう。あなたが持てるものの中でベストを尽くしてください。あなたの子どもがあなたに望むことは、それだけです。これらのベビーBは、赤ちゃんと親が正しいスタートを切るための手助けとなります。あなたのお子さんと家族のそれぞれのニーズに合う、あなた自身の育児のスタイルを作り出すためのスタートの道具としてこれらを使ってください。アタッチメント育児は、あなた自身の個人的な育児スタイルを育む手助けとなります。

アタッチメント育児は厳格な一組の規則というよりは、一つのアプローチ法です。実際多くの親達は本能的にこのようなスタイルをとっています。育児は、一つの方法のみで行うには、あまりに個人的なことであり、赤ちゃんはあまりに複雑です。大切なポイントは赤ちゃんと絆を作ることです。ベビーBのアタッチメント育児はその手助けとなるのです。一端、絆ができあがったら、うまく言っているものはそのまま続け、そうでないものは、修正してください。やがて自分達親子にフィットする(合う)スタイルを作り上げることができるでしょう。フィット−親と赤ちゃんの関係をほんのひとことで十分に表現している言葉です。

アタッチメント育児は、赤ちゃんに共鳴する育児です。乳児の出すサインに敏感であることによって、赤ちゃんのニーズのレベルがどの位なのかを学びます。赤ちゃんは自分のニーズは満たされ、自分の言葉は聞いてもらえる、ということを信じることができるために、自らのサインを出す能力を信じるのです。その結果、赤ちゃんはより上手なサイン発信者となり、親はより良いサイン受信者となり、親子の全てのコミュニケーションネットワークは、ずっと簡単になることでしょう。

アタッチメント育児は、ひとつの道具です。道具は仕事を完成させるために使うものです。道具が良いものであればあるほど、より良い仕事をよりたやすくすることができます。私がsteps(段階)という言葉ではなくtools(道具)という言葉を使っていることに気がつきましたか。Stepsは、仕事を成し遂げるために全ての段階を踏襲しなければならないということを示唆します。アタッチメント育児は、絆を作る道具であり、赤ちゃんとあなたをつなげるものとして考えてみてください。一端、絆ができてしまえば、親子関係(躾、健康管理、たわいない子どもとの楽しい一時)がより自然でより楽しいものになります。アタッチメント育児を躾の道具として考えてください。あなたがあなたの子どもを知れば知るほど、子どもは、あなたを信頼し、躾はより効果的になります。子どもを躾ることは、より簡単になり、子どもはより躾やすい子になることがわかるでしょう。